西田シャトナー「遠い夏のゴッホ」愛するセミに歌うため、息を飲む極限の昆虫世界
SHATNER of WONDER #6「遠い夏のゴッホ」が本日7月14日に東京・天王洲 銀河劇場にて開幕する。これに先がけ、昨日7月13日に囲み取材と公開ゲネプロが行われた。
西田シャトナー作・演出による本作は、彼が自作を発表するプロジェクト・SHATNER of WONDERの第6弾。羽化したら恋人になろうと約束を交わしていた幼なじみよりも、年を数え間違えて1年早く羽化してしまったセミのゴッホ。彼が彼女に再会するため、次の夏まで生き延びようと奔走する物語だ。2013年版では松山ケンイチが務めたゴッホ役を安西慎太郎が演じ、ゴッホの恋人・ベアトリーチェ役には山下聖菜がキャスティングされた。
同じユウダチゼミのスタスキー(宮下雄也)、アムンゼン(山本匠馬)と共に地上に出たゴッホのもとに、サーベルカマキリのセルバンテス(平田裕一郎)やイコクウロコトカゲのアオアシ(永田彬)、女王アリのエレオノーラ(三上俊)、彼女に仕える軍人アリ・ゼノン(陳内将)、バンクォー(小澤亮太)らが襲いかかる。ときに仲間を失いながらも、ベアトリーチェと再会するその日までは、“胸のドラム”を鳴らさずにいることを誓ったゴッホは、共通の友人であるカレハミミズ・ホセ(木ノ本嶺浩)を通してベアトリーチェと気持ちを確かめ合う。
同じ森にはダンガンバチのジンパチ(米原幸佑)やゴイシクワガタのイルクーツク(兼崎健太郎)、シマシマグモのラングレン(萩野崇)、ツノカブトムシのアンドレイ(土屋シオン)、アルミタテハチョウのヘンリー(丸目聖人)、プラチナカナブンのイワン(星元裕月)が暮らし、捕食をチラつかせ合いながらも、酒場で癒やしの時間を過ごしていた。しかし小さな生き物の世界は、常に死と隣り合わせ。自分の命を食そうとする者との戦いが、息つく暇なく繰り広げられる。そこに最も古くから森に住むネムリガエルのブックハウス(石坂勇)が現れ・・・・。
蜜を吸うための管・“セミストロー”を首からぶら下げたセミたちは、羽化前後の変化を“幼虫なまり”の有無で表現。またはしごを駆使して、“飛行”を見立てる。羽化のシーンでは、苦悶する安西に対し、山下は幻想的に表現したほか、群唱やバトルシーン、何人もの身体で表現される1匹のトカゲなど、熱量と想像力に満ちたシャトナー作品の魅力が随所に散りばめられている。そんな昆虫たちの生き様を、照明のビームが森に降り注ぐ陽の光のように優しく包んだ。
ひと夏しか過ごせない小さな生き物たちが懸命に生き、やがて老いて記憶をも失い、1人また1人と去っていく姿は、昆虫の世界を描きながらも“人生”の何たるかを観客に突きつける。1年後、ゴッホと同い年のユウダチゼミ・スチュアート(伊勢大貴)が、ベアトリーチェにゴッホの再来を告げる。果たして2人は再会を果たすことができるのか。結末は劇場で確かめよう。上演時間は休憩なしの約2時間10分。ゲネプロを終えた安西は、「今より倍、いや、12、3倍いいものにしていきます」とカーテンコールで挨拶した。
なおゲネプロ前に行われた囲み取材にはシャトナー、安西、山下、小澤、木ノ本、山本、陳内、米原、平田、兼崎、萩野、石坂が出席。シャトナーは「昆虫は、地中に住んでいたものが空を飛んだりと、どんどん姿が変わっていく生き物。そういうどんどん変化していくものを題材に芝居を作ると、自分たちの人生の中での変化について、ちょっと楽しく深く考えることができるんじゃないかなと思って作り始めました」と執筆当時の構想を語る。さらに「変化することと変化しないことがバラバラで存在するんじゃなくて、変化するからこそ、何が変わらないのかが見つかる。つまり我々人間が生まれて死んでいくからこそ、変化の中で生きてよかったなと思えることがあるんだなっていう思いに今、至っています。いつか我々も死んでいきますし、悲しい別れをした大切な人もいますけれども、そうしたことに意味があるんだなって、この芝居を通して、観客の皆さんと一緒に改めて感じることができたらいいなと思っています」と挨拶。また「そういう変化を役者たちが芝居で体現してくれたので、今とても幸せです」と微笑んだ。
安西は「場当たりを終えて、本当に変化する作品だなと思いました。(小屋入りしたら)照明も音楽も、役者の気持ちも変化して。その舞台上で起こっているすべての変化が、お客様の心を捉えたときに、さらに特別な“変化”が起きるんじゃないかなという可能性を感じました。その“変化”をお客様に届けられるだけの稽古をやってきましたし、素晴らしいスタッフさんが揃っております。ぜひ楽しみにしていただきたいです」と自信をのぞかせる。
山下は見どころについて「ゴッホが1年早く羽化してしまっても、ベアトリーチェはゴッホと1年後に会える日を楽しみに強く生きている。そのまっすぐな愛を見ていただきたい」と自身の役どころを語る。小澤は、「『(SHATNER of WONDER ♯3)ロボ・ロボ』でロボットを演じた次に、虫を演じられるとは。本当に楽しみです」と顔をほころばせ、陳内は「稽古中にシャトナーさんが、『ゼノンは、みんなは、僕自身なんだ。僕が不思議に思ってることをみんなが代弁してくれる。世の理と昆虫界の理を皆が背負ってくれる』っておっしゃられたのを聞いて、あー、と腑に落ちました」と手応えを語った。
シャトナー作品に初参加となる木ノ本は、作品について「頭で理解するよりも、感覚的な演劇な気がしています。僕も素直に翻弄されたいと思います。シャトナーさんの巧みなセリフ回しを楽しんでもらえたら」と紹介。山本は「僕は唯一鳴くことをしない生き物なので、鳴かないセミがどのような生涯を駆け抜けていくのか、観ていただきたい」とアピールする。
米原は「地元がけっこう田舎で、ほんまねえ、ハチにものすごい刺されたことがいっぱいあって、ハチこのやろうと思ってたんです。でも今回やるにあたって、ハチが愛おしくなりました」とエピソードを明かし、平田は「昆虫は姿が変わるということで、私は半ズボンからスタートして、どんどんズボンを脱いで大人になっていきます。最高のスタッフさんと一緒に、最後までカマキリを生きたいと思います」と意気込んだ。
兼崎は「シャトナーさんとは何回かご一緒させてもらってます。独特の世界観を持った作品を作られる方なので、演じる側としても解釈が難しかったり、毎回悩みながら取り組んでます」と苦笑い。しかし、「抽象的なシーンもあるのですが、僕たちが役者としてお客さんにわかりやすく表現したいと思います。そしてお客さんと共に作っていくのがシャトナーさんのお芝居だと思ってますので、みなさんも十分に虫の世界観を感じてもらって、そこで一緒に生きていけたらいいなと思っております」と呼びかけた。
萩野は「シャトナーさんと『登場人物、みんないい人だよね』という話をしてました。演じていて心が温まるような作品だなと思っています。来ていただくお客様に、少しでもその優しさを感じていただけたら」とコメント。石坂は「長く生きるもの、あっという間に去っていくものを目の前にして、今までとは昆虫の見方が変わりました。生きるというテーマは人も虫もそんなに変わらないんだなという気持ちになりました」と自身に起きた心境の変化を語った。
公演は7月23日まで東京・天王洲 銀河劇場にて行われ、その後7月29・30日に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演される。
キティエンターテインメント × 東映 Presents SHATNER of WONDER #6「遠い夏のゴッホ」
2017年7月14日(金)~23日(日)
東京都 天王洲 銀河劇場
2017年7月29日(土)・30日(日)
大阪府 森ノ宮ピロティホール
作・演出:西田シャトナー
出演:安西慎太郎 / 山下聖菜 / 小澤亮太、木ノ本嶺浩、山本匠馬 / 陳内将 / 伊勢大貴、宮下雄也、三上俊、永田彬、土屋シオン、丸目聖人、星元裕月 / 米原幸佑、平田裕一郎、兼崎健太郎 / 萩野崇、石坂勇
(※http://natalie.mu/stage/news/240496より)
山下聖菜ちゃん出演、
「遠い夏のゴッホ」
聖菜ちゃんに対しては、
色々ありすぎて、観に行くのを躊躇ってしまう状態。
舞台、あと3本決まっているようだけど・・・
どうしよう。