PICK UP ACTRESS 南乃彩希
1回だけ上演の舞台「壁蝨」で初主演
子宮移植を題材に言葉と心が裏腹な役
――去年の初舞台「シブヤから遠く離れて」は、自分のなかでどんな感触がありましたか?
「同じお芝居を1ヵ月に何度も繰り返すのが初めての経験で、勉強になることがたくさんあって良かったです。すごい先輩方のお芝居を間近で見てワクワクした部分もありましたし、お客さんがその場で反応してくれるのがいいなと思いました。映像だと終わってからどうだったか聞きますけど、本番の最中に笑ってくれたり泣いてくれたりするのがわかって、『こうやって見られているんだ!』と思いました」。
――過程では悩んだこともありませんでした?
「いっぱいありました。舞台を目いっぱい使っていいのに、しゃべりながらうまく動けなかったり、台詞をバーッとしゃべっちゃって感情の波が出なかったり……」。
――映像のお芝居とは違いましたか?
「いつも以上に声を張ったりするので、全然違うと思いました。でも、私は意外とノドが強いみたいで、潰れませんでした。もともと体育祭の応援とかですごく声を出して、みんなは声が嗄れても、私は嗄れない人だったんです」。
――「スポーツでは本番に強かったので舞台でも」というお話がありましたが、実際、生の本番でも稽古の成果を発揮できました?
「毎回すごく緊張しましたけど、何とかなるなと(笑)。アクシデントは毎回ありました。20回が全部同じようには行かない部分もあって、それも楽しかったです」。
――どんなアクシデントが?
「雨が降るシーンがあって、私がハケる直前に思い切り転んじゃったり(笑)。微妙に気づいた人がいたかもしれないし、『気づかなかった』とも言われました。普段も何にもないところで転んでしまうんですよね。ツルッと滑って(笑)」。
――今回主演する「壁蝨」は、とりあえずタイトルを読めました?
「読めませんでした。最初は『ダニ』とカタカナになると聞いていたので、漢字になって変わったのかと思って調べちゃいました。ダニって種類がいろいろあって、Aという種類がBという種類を攻撃していると、次の世代でBがAを攻撃するらしいんです。ネタバレになるので詳しく言えないんですけど、そういうことが出てくる作品です」。
――作・演出の加藤拓也さんとは、事前に面接みたいなことがあったんですか?
「一度お話させていただきました。『高校で何が流行っているの?』とか雑談みたいな感じで、舞台に関する話があまりなかったんですけど、そのちょっとあとに今回の真子という役に決めていただきました」。
――子宮移植を題材にした物語だそうですが、脚本を読んでどんなことを感じました?
「私は二役やらせていただいて、真子はいじめられて、ロキタンスキー症候群という(先天的に子宮を持たない)病気でもあって、正直ホッとするような内容ではないんです。でも、すごくお母さんに会いたくなりました。私自身、お母さんになかなか言えないことがありますけど、親子関係とか考えさせられることはすごく多いです」。
――気持ちが沈むようなところもありつつ?
「あります。いじめのシーンはむごくて、『自分だったら……』と思うと、たぶんやる側も観る側も苦しくなりそう。それでも、いじめに立ち向かう真子はすごく強いなと思います」。
――真子はどんなキャラの女の子なんですか?
「私と似てない部分が多いです。真子はお母さんに対しても友だちに対しても、自分が思ったことをそのまま言えない子で、お母さんに向かって何かしゃべっていても、実際はそう思ってなかったりします。ロキタンスキー症候群とわかって自分と向き合うところは、私にない強さだと思いますけど、強いだけに何でも1人で抱え込んでしまうんです」。
――ということは、彩希さんはそうではないと。
「私はお母さんにも友だちにも思ったことは基本すぐ言っちゃうタイプで、抱え込まないですね。たまにヘンなところで抱え込んで、いきなりボワーンと爆発しちゃうときはありますけど(笑)。真子の強いところは憧れます」。
――劇中では、経験したことのない気持ちが多く出てくるような?
「そうですね。いじめも実際に体験したことはないですし、何とか真子の気持ちに追いつけるようにしないと。台詞通りにしゃべっても、さっき言ったように真子自身が本当に思っていることは全然違う。思ったままの言葉で返す私自身とは違う部分なので、そこもまた難しいです」。
――確かに、言葉で発したことと考えていることが違うのは、表現が難しそう。
「『~だよね』と言ってるけど、心のなかでは別のことを考えているのを、うまく表現しないといけないんですよね」。
顔合わせのときにいきなり
主役の重圧がドーンときて
――かつ二役ということで、考えなきゃいけないことは本当に多そうですね。この取材日時点で稽古に入って1週間だそうですが、特に課題にしていることは?
「とりあえず真子の演技を流れでやらせていただいていて、やっぱり自分と似てないところが多すぎて、うまく役に馴染めてない部分がつい出てしまいます。私はハッキリしているタイプですけど、真子はそうじゃない。会話のなかで、たぶん私の口調で言ってしまっている部分がちょっとずつあります。自分で『何かこれは真子じゃない』と感じて、たぶん演出家さんもそう思っているので、そこを課題に本番までに細かくやっていきたいです」。
――病気について悩む場面もあるんですか?
「はい。いじめられていて、ロキタンスキー症候群だとわかって、『なんで私ばっかり……』という感じです。でも、病気がわかったことでお母さんに爆発して、やっと言いたいことも言えるようになるんです。いじめに立ち向かう気持ちにもなるので、病気だから強くなれた部分もあるんじゃないかと思います」。
――そんな舞台を1回しか上演しないのはもったいない気もします。
「私もすごくもったいないと思います(笑)。だからこそ、皆さんにも『もったいない』と思ってもらえるような舞台にしたいです」。
――主演の重みも感じていますか?
「最初はあまり考えてなかったんです。自分がヘンに引っ張っていくのも何か違う気がして、そんなに重みがのしかかることもありませんでした。それが顔合わせのときにいきなりドーンとプレッシャーが来ました。前回は自分が一番年下で舞台も初めてで、ただ『演出家さんのお話を受け止めて、ついていけばいい』と考えていたんです。『今回はそうじゃないんだ』と思った瞬間、急に不安になりました。皆さんのほうがたくさん演技をされているのに、『私が主演でいいんだろうか?』とすごく思って……」。
――まだ二回目の舞台にして。
「厚い台本のほとんどが自分の役の台詞で埋められていて、そんなに多くしゃべるのも初めてだし、台詞を覚えるので精一杯になってしまう気もしました。今はとりあえずやっていくしかないので、重みをしっかり受け止めて、自分の足りない部分を本番までに埋めたいと思います」。
――高校最後の夏休みでもありますが、他の思い出を作る時間はなさそうですね。
「でも、8月1日が舞台の顔合わせで、その前に家族で北海道旅行に行ってきました。初めての北海道だったんですけど、とにかくおいしい(笑)!」。
――北海道の食べ物がおいしかった、ということですよね(笑)。
「はい。札幌とか小樽とか、お父さんがレンタカーを借りて、いろいろな場所に行って、カニ、メロン、海鮮類……それにチーズもおいしくて! 気候も湿気がないから、暑くても暑くない感じで最高でした」。
――もう夏の思い出は作ったと。
「夏はあまり好きじゃないんですけど(笑)。朝起きたとき、暑くてイヤじゃないですか? 頭を洗ったのに髪の毛が汗をかいていて気持ち悪いし。あまり外に出たくないです。でも私、夏の夜は一番好きなんです(笑)」。
――独特な空気感がありますよね。
「今だと舞台の稽古で遅くなったときとか、1人で音楽を聴きながら帰るのが好きです。あと、誰かに無性に会いたくなります。それで友だちにいきなり『今、何してるの?』と電話して『家だよ』『じゃあ、行っていい?』って急に押しかけたりもします(笑)。地元でお祭りをやっていると、ちょっと寄って何か買って帰ったり、歩いている途中に花火が上がっているのを見たり……。何もしなくても、夏の夜は何か好きですね」。
――季節としては、涼しい秋のほうが好きなんですか?
「冬が一番好きです。寒いのはすっごい苦手ですけど、クリスマスとかお正月とか行事が大好きなんですよね。洋服を着て『出掛けよう』って瞬間もすごく好き。モコモコした服を着て、冬のほうが出掛けたくなりますね」。
――とりあえずは夏の舞台を無事乗り切ったら、自分にご褒美をあげようとか考えてます?
「30日が本番で9月1日から学校ですけど、1日休みがあるので、何をしようか考えてます。『どこかに出掛けたいな』とか。夏の最後を充実させたいです」。
(※https://hustlepress.co.jp/minamino_20170821_interview/より)
「壁蝨」では二役でしたが・・・
ガラリと雰囲気の変わる2人を見事に演じていました。
どちらも物語のキーとなる役だからこそ、
プレッシャーもあったのだと思いますが、
しっかり。
北乃きいちゃん,荒井萌ちゃんらの後輩。
女優として成長してきてるなって思います。